風のベーコンサンド 柴田よしき
この小説には、すがすがしい風が吹いているように感じた。ところどころに出てくる草花の名前、百合丘高原の素晴らしい食材、そこに生きる人たちの思いや生きざま、それがからみあって、ドラマが展開していく。
奈穂の店「カフェSon de vent(ソン デュ ヴァン)」は
百合が原高原にある。バブル期に建てられたペンションを買い取って改装した店である。
離婚調停中の奈穂の人生、カフェ経営の奮闘そして百合が丘高原に住む人々の人間模様を描いた物語だ。
目次
一方百合丘高原には日本全国で展開しているリゾート開発会社のホテルが建つ予定がある。これまでの日本各地のリゾートホテルの例だと、ホテルのレストランはどれも東京の有名支店で各店とも仕入れは独自のルートを使うらしく、地元は素通りのことが多いというのだ。
ところが、、、
ある日、客として現れる60代前半、赤黒い顔で土汚れのついた作業服に長靴をはいた男がやってくる。
テレビを見たいという男に、店にはテレビを置いていないので奈穂は自分の携帯をさしだした。男はとても嬉しそうにその携帯のテレビ番組をみていた。
高原とテレビは相いれないものという考えがあるが、今度あの男性が来た時には大きな画面でテレビをみてもらいたいという思いから、テレビのある小部屋を設けることになる。
思いが通じたようにその男が再び訪れる。
その日のランチは
高原のチーズクリームシチュー、
ハーブサラダとベーコンサンドがついたもの。
そのベーコンサンドの説明をきくと、
レタスやトマトは入れないで、マヨネーズもいらない。
パンを焼いてフライパンから出したベーコンを脂をきらないでのっけて、
芥子をちょこっとのせたものをつくって欲しいという。
おまけに自分で作ろうか、とまで申し出てきた。
「ベーコン、あまりぐじょぐじょはだめだが、カリカリ過ぎてもだめだよ」という。
奈穂は注意深くベーコンを焼いて完成。
男は、何のリアクションもなくもくもく食べると、
一切れだけベーコンサンドを残して、ごちそうさん、と言ったのだ。
どうして?と残したのと冷や汗をかく奈穂に、
「あんたも、食べてみたら。これ」と言われ、
一切れ口に入れると「わ、おいしい」
このシーンがとても印象的だった。
ベーコンをおいしく焼くのは結構難しく、
私はガリガリになってしまうのだけれど、、、
このベーコンサンドが元となっていい方向に風が吹いていく。
<特選・ベーコンサンドの作り方>
フライパンでじっくりと、心持ち弱火でベーコンを焼き、
しみ出した油で赤身の部分を上げるように火を通すと、
残った脂肪の部分もさくっとした歯触りになる。
オーブントースターがチンとなって
ほどよく焼けたパンの上に
直接ベーコンを敷く。
芥子をほんの少し、さっとベーコンに広げる。
もう一枚パンをのせ、完成ー。
読み進めていくと、わかったのだが、実はこのベーコンサンドは思い出のもの、むかし離婚した妻との間にできた娘にせがまれて男がつくってあげたものだった。
その娘が好きだった本、みなしごになったひねくれた女の子が田舎に引き取られて、遠い昔に使われなくなった鍵のかかった庭に入り込んで…それに、田舎もんの貧乏な男の子が出てきて、その子が持っている弁当がこれだった。
そう、この小説は私が小学生の時に大好きだった本「秘密の花園」だった。私は、もちろんこのおいしそうなベーコンサンドにも惹かれ、すぐに食べたくなったほどだが、前回のブログでこの小説の名前を出したばかりだったので、驚き、いっきに親しみがわいてしまった。
そして、その男が初めてカフェに訪れたときに、嬉しそうに視ていたテレビ番組には、娘が出演していたのだった。
このさき、そしてこの男は何度も奈穂の店をおとずれ、地元のすばらしい食材を知ることになる。
新しく建つホテルは今までの方針を変えたらしく、百合丘高原の素晴らしい食材を活かしたレストラン経営をすることになった。地域の人たちとともに、新しい百合丘高原として生まれ変わろうとしている。
そんなおはなしです。
ところで、とっても美味しそうなベーコンサンドなのですが、これは上質のベーコンじゃないとできないので、今回私が紹介するのは
次のベーコンサンドです。
食パン2枚分
<材料>
・食パン8切り…2枚
・枝豆…15さやくらい
・ベーコン…2枚
<作り方>
食パンは両面焼く、
クリームチーズをぬり、
焼いたベーコン、
ゆでた枝豆(冷凍でも可)を挟んで
できあがり!